「苦手」を分析することで就職の失敗を減らす — 障害当事者だからこそ伝えたいこと
就労移行支援や転職支援の現場では、「MOSを取りましょう」「簿記を取りましょう」「プレゼン力を上げましょう」といった“スキルアップ”がよく話題になります。
もちろん、スキルを高めることは大切です。しかし私は 「苦手なことの分析」のほうが、就職の成功確率を大きく上げる」 と感じています。
理由はシンプルで、
スキルは足せるが、「苦手」を知らずに選んだ職場は後から変えられない
からです。
障害特性がある人にとって、「苦手の解像度」を上げることは、合わない仕事を避けるための最大の武器になります。
この記事では、障害者雇用で働く私が実際に感じたこと、失敗や経験を踏まえて、
なぜ「苦手の分析」がキャリアの中核なのか?どうやって分析を進めればいいのか?をわかりやすく解説します。
なぜ「苦手」がわかると就職がうまくいくのか?
1. 合わない職場を事前に避けられる
障害者雇用の職場は、企業ごとに環境も業務内容もバラバラです。
「苦手」を知らないまま応募すると、配属後にこんなことが起こりがちです。
- ルーティン作業が苦手なのに、完全ルーティンの部署に配属されて疲弊
- マルチタスクが苦手なのに、複数案件を同時進行する部署に入ってしまう
- コミュニケーションが負担なのに、社内調整が多い職務に就いてしまう
これは本人の能力というより 「ミスマッチ」が原因 です。
2. 必要な配慮が明確に伝えられる
「苦手」が明確になる → 必要な配慮事項が言語化しやすくなる。
就労移行の計画書・面接・入社後面談でも説明でき、結果として働きやすい環境が整いやすくなります。
3. 無駄な努力が減る
苦手が不明確なまま支援者や周囲の意見だけで何かを学ぶと、
「本当に必要なスキルではない学習」に時間を使ってしまうことが多い。
逆に苦手が明確だと、
「自分が避けるべき仕事」
「自分が補うべき最小限のスキル」
が判断できます。効率的なキャリア形成につながります。
苦手は“克服”するより、“知って避ける”ほうが安全
障害特性に由来する苦手さは、努力で完全に消えるものではありません。
克服しようとして追い込まれ、体調を崩したり自信を失うケースも少なくありません。
苦手に対する最も現実的な戦略は「避ける」ことです。
避けるというのは逃げではなく、
「自分が最も力を発揮できる場所を選ぶための戦略」です。
どうやって苦手を分析する? 3ステップで解説
まずは「できる/できない」を雑に書き出す
深く考えすぎず、以下を一気に書き出します。
- 過去にしんどかった仕事
- 頼まれると不安になること
- 長く続けると疲れる作業
- 過去職で失敗した業務
- 「やりたくない」「苦手」と直感で思うこと
書けたら、特に疲労やストレスの原因になったものに印を付けます。
なぜ苦手なのか原因を分解する
苦手の正体はたとえばこんな要素に分かれます。
- 注意が散りやすい
- 細かい数値管理が苦痛
- 同時進行が難しい
- 長時間の集中が続かない
- マニュアルの解釈が苦手
- 電話での会話が負担
- 思考の切り替えが遅い
- 締め切りが重なるとパニックになる
- 作業環境の騒音・雑音に弱い
原因が見えると「避ける」「工夫する」「配慮を求める」が明確になります。
苦手を“応募のフィルター”にする
原因がわかったら、求人を見るときの判断基準になります。
例えば:
- マルチタスクが苦手 → 営業事務・総務は避ける
- 電話応対が苦手 → 電話少なめ or なしを条件にする
- 雑音で集中力が落ちる → 在宅可の求人を優先
- データ入力は得意だが会話が苦手 → バックオフィス寄りの企業を選ぶ
- 納期プレッシャーが苦痛 → 毎月締め業務のある経理は注意
これだけで 働きにくい職場に当たる確率は大幅に減ります。
苦手を分析すると「働きやすさが急に上がる」理由
苦手を知る → 自分に向かない業務が避けられる
結果として…
- ミスが減る
- 自己肯定感が上がる
- 体力の消耗が減る
- 障害特性とうまく付き合える
- 長期間働ける
特に障害者雇用では「長く続ける」ことが大事なので、苦手分析は最強のツールになります。
まとめ:スキルより先に“苦手”を言語化することから始める
スキルは後から身につきます。
でも苦手を隠したまま入社すると、相性の悪い業務にずっと苦しむことになります。
だから私は声を大にして言いたい。
スキルよりもまず「苦手の解像度を上げること」。
苦手を正しく理解すれば、
無理のない働き方が自然と選べるようになりますし、
就職後も自分を守る基準ができます。